【スクラムマスター】役割と資格2種|CSM・PSM I比較

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スクラムマスターは、スクラムの確立とチームの有効性に責任を持つ役割です。支援と意思決定の境界を整理し、資格のCSMとPSM Iを学び方・費用・更新条件から比較します。

1. スクラムマスターの役割 | 何に責任を持つのか

スクラムガイドは、スクラムマスターの責任を「スクラムガイドで定義されたスクラムを確立すること」と「スクラムチームの有効性」に置いています。チームと組織がスクラムの理論・実践を理解し、チーム自身が仕事の進め方を改善できるように支援します。

スクラムマスターの仕事の範囲:スクラムマスターの役割;責任、責任を果たすための活動、共有すべき目的
▲ スクラムマスターの仕事の範囲

ここでいう有効性は、会議を予定どおり終えることや、作業を予定どおり消化することだけでは捉えられません。スクラムの枠組みの中で、価値ある成果を生み出すために実践を改善できているかが問われます。会議の司会や障害への対応は、その責任を果たすための活動です。

役割を任されたときは、担当する会議名だけで業務範囲を合意しないことが大切です。「チームが改善を実行できるようにする」「組織にもスクラムを理解してもらう」という目的まで共有すると、他部署との対話が必要になった際にも、仕事の範囲を説明できます。

アジャイルの考え方との関係や、イベントを含むスクラムの進め方を押さえたうえで、以下では「誰をどう支援し、どの判断を相手に残すか」を具体化します。

2. スクラムマスターの仕事内容 | チーム・PO・組織をどう支援するか

支援対象によって、働きかける内容は変わります。スクラムマスターがすべての問題の担当者になるのではなく、問題に取り組める人や、判断に責任を持つ人が動ける状態を整えます。

チームへの支援:自己管理と価値ある成果を支える

スクラムガイドが挙げるチームへの支援には、自己管理と職能横断のコーチング、完成の定義を満たす価値ある成果への集中、進行を妨げる障害の除去を促すことがあります。職能横断とは、チームとして価値を生み出すために必要なスキルがそろっていることです。

たとえば、作業の引き継ぎで認識が食い違う場面を想定すると、スクラムマスターは「次の作業に必要な情報は何か」「完成と判断する条件を共有できているか」と問いかけられます。タスクの分け方をチームで検討する場を整えることも支援案です。具体的な作業方法の決定は、実行する側に残します。

障害の除去についても、すべてを自分で解決する必要はありません。必要な権限を持つ人につなぐ、判断に欠けている情報を明らかにするなど、除去が進むように働きかけることが含まれます。

POへの支援:理解を助け、価値への責任を尊重する

プロダクトオーナー(PO)も、スクラムの理論・実践の理解を支援する対象です。ただし、プロダクトの価値の最大化と、効果的なプロダクトバックログ管理への責任はPOにあります。

バックログの内容が伝わらず議論が止まる場面なら、スクラムマスターは、何が理解されていないかを整理する対話を支援できます。要件の言語化が必要な場面でも、記述を手伝うことと、バックログの順序を決める責任を引き受けることは分けて考えます。

POがバックログに関する作業を他の人へ委ねても、その責任はPOに残ります。スクラムマスターの助言が、そのまま優先順位の決定になる運用は避けましょう。

組織への支援:チームの外にも理解を広げる

スクラムマスターの仕事は、チーム内で完結しません。組織内でスクラムの理論・実践が理解されるように支援することも責任の一部です。

実務では、承認や情報提供を担う部署に、チームが何を必要としているかを説明する場面があります。関係者の整理を通じて、相談相手と判断者を見極めると、働きかける先が具体的になります。相手の業務上の制約も聞き取り、チームとの接点を整えることが支援になります。

スクラムマスターの支援先:チーム(自己管理をコーチング
進行を妨げる障害の除去を促す)、プロダクトオーナー(スクラムの理解を支援
価値・バックログの責任はPO)、組織(スクラムの理論・実践への
理解を広げる)
▲ スクラムマスターの支援先

3. スクラムマスターとPMの違い | 作業指示と自己管理の境界を知る

スクラムマスターとPMの違いを考えるときは、肩書きよりも「日々の判断を誰が担うか」に注目してください。PMの権限は組織や案件によって異なるため、一律に比較するより、スクラムで定義された責任との整合を確かめるほうが実務的です。

PMからスクラムマスターへ:個人への作業指示と自己管理の違い:日々の判断、担当の決め方、スクラムマスターの責任、作業整理の知識、スクラムとの整合、日々の判断、担当の決め方、スクラムマスターの責任、作業整理の知識、スクラムとの整合
▲ PMからスクラムマスターへ:個人への作業指示と自己管理の違い

スクラムガイドでは、スクラムチーム内に階層はなく、誰が何をいつどのように行うかを内部で決める自己管理型とされています。開発者は、スプリントの計画であるスプリントバックログを作成し、スプリントゴールに向けて日々調整する責任を持ちます。

したがって、スクラムマスターの「チームの有効性への責任」は、進め方を一方的に決める権限を意味しません。PMから役割を変えても、個人への作業指示を続けるなら、自己管理との不整合が残ります。WBSの作成などで培った作業整理の知識は、計画づくりを支援する場面で生かせます。誰がどの作業を担当するかは、開発者が決めます。

デイリースクラムの進め方も開発者が選べる

デイリースクラムは、スプリントゴールへの進捗を検査し、必要に応じて計画を調整するための場です。ゴールへの進捗に焦点を当て、次の作業に使える計画を生み出す限り、構成や技法は開発者が選べます。

スクラムマスターが決めた質問に順番に答える形式を、必須のルールにする必要はありません。進捗の伝え方を検討するときも、「スクラムマスターに報告できたか」ではなく、「開発者が計画を調整できる情報を得られたか」を判断基準にします。

想定例:テスト環境の承認待ちをどう扱うか

社内申請機能を開発するチームで、テスト環境の利用承認が止まっている状況を想定して考えてみます。この場合、支援と意思決定は次のように分けられます。

担い手 この場面での行動案 残すべき判断
スクラムマスター 承認に不足する情報と対話相手を整理し、関係者が話せる場をつくる 作業計画やバックログの順序を代わりに決めない
開発者 スプリントゴールへの影響を検討し、作業計画を調整する どう作業を進めるか
PO 価値への影響を踏まえ、プロダクトバックログの順序を検討する 何を優先するか
承認担当者 利用条件や不足情報を説明し、担当する承認を判断する 環境利用を承認できるか

工程の管理の観点で待ち状態を見つけても、それだけでは誰が判断すべきかは決まりません。スクラムマスターは、次の問いで支援内容を具体化できます。

  • どの承認が、どの情報の不足によって止まっているか。
  • 誰との対話が必要で、その人は何を判断できるか。
  • 計画の変更や優先順位の判断を、誰に残すべきか。

この例では、スクラムマスターが承認者を急かすだけでなく、承認者とチームの双方が判断に必要な情報を得られるようにします。そのうえで、作業計画と価値の判断を、それぞれの責任を持つ人につなぎます。

4. スクラムマスターの資格 | CSMとPSM Iの学び方・受験条件を比較

資格は、職歴だけで選ばず、どのように学びたいかで絞り込めます。CSMは認定講師による研修を経て試験へ進む経路、PSM Iは研修を必須とせずに受験できる経路です。

CSMとPSM I:受験までの経路:受験の前提、学び方、問題数・時間、合格基準、期限・受験回数、受験の前提、学び方、問題数・時間、合格基準、期限・受験回数
▲ CSMとPSM I:受験までの経路

PSM Iにも講師付き講座や自習型講座があるため、「CSMは研修、PSM Iは独学専用」という区分は正確ではありません。違いは、講座の受講が受験の前提条件かどうかです。

比較項目 CSM PSM I
認定団体 Scrum Alliance Scrum.org
受験の前提 認定講師による16時間の研修修了 研修受講は必須ではない
学び方 講師から学ぶ。例・演習・教材は講座によって異なる 自分で学習するほか、講師付き・自習型講座も選べる
試験形式 オンラインの選択式 選択式・複数回答・正誤問題
問題数・試験時間 50問・1時間 80問・60分
合格基準 50問中37問の正答 85%
期限・受験回数 研修修了後90日以内。受講料に2回分を含む 受験パスワードに期限はないが、1回限り有効

出典:CSMの公式受講・試験条件、PSM Iの公式試験条件。

CSMは講座内容と修了後の日程を合わせて選ぶ

CSMは、講師との学習を取得経路に組み込みたい人に向いています。学習目標は共通ですが、例・演習・教材は講師ごとに異なるため、講座によって学び方が変わります。

講座を選ぶ際は、役割間の対話や自己管理など、自分が理解を深めたいテーマを演習で扱うかが比較材料になります。また、研修を受け終われば自動的に認定されるわけではなく、試験への合格が必要です。受講日程に加え、修了後の受験までを予定に入れておきましょう。

PSM Iは学習経路を選び、日本語でも受験できる

PSM Iは、研修を受けずに試験へ進むことができ、日本語でも受験できます。講義が必要な部分は講座で補い、自分で理解できる部分は自習するなど、学習方法を選べます。

研修なしで受験できる分、スクラムガイドは自分で読み込む必要があります。用語を覚えるだけでなく、「スクラムマスターが作業を割り振らないのはなぜか」「POへの支援と価値への責任はどう違うか」を自分の言葉で説明できるか確かめてください。説明に迷う箇所が、追加で学ぶべきところです。

どちらを選ぶかは、講師の支援が必要かどうかと、次に示す支払い・維持の条件で決めるのが現実的です。

5. CSM・PSM Iの費用と更新 | 取得後の負担まで含めて選ぶ

費用は「取得時に買うもの」「追加受験」「取得後の維持」に分けると比較できます。CSMの講座料金とPSM Iの試験料金を、同じ内容の購入として比べないことがポイントです。

費用・条件 CSM PSM I
取得時の支払い単位 講師が設定する講座ごとの受講料 試験のみなら1回US$200
受験料の扱い 受講料に試験2回分を含む 試験のみの購入は1回分
講座費用 取得経路に必須 任意。試験のみの費用と分けて扱う
金額を左右する条件 地域、オンライン・対面などの形式、追加教材、税など 追加税が適用される場合があり、購入時に計算される
取得後の維持 CSM単独の通常更新は2年ごとに20 SEUとUS$100 生涯認定。年間更新料なし

費用の根拠はCSMの公式案内、PSM Iの公式案内、資格更新の公式条件です。

CSMの予算は選んだ講座の支払額を基準にする

CSMの受講料は講師が設定するため、講座によって金額が異なります。Scrum Allianceの公式サイトでは、公開されている受講料の幅をUS$250〜2,495(2023年10月時点)と案内しています。候補講座ごとに、受講料、税の扱い、含まれる教材をそろえて比較してください。受講料には試験2回分が含まれるため、試験費用を別に見積もる必要はありません。

取得後には、更新料に加えて継続学習の負担があります。SEUは継続学習を記録する単位で、対象となる学習活動の1時間が1 SEUに相当します。CSM単独の通常更新では、必要なSEUと更新料の両方を提出する必要があり、お金を払うだけでも、学習を記録するだけでも更新条件を満たしません。

PSM Iの予算は受験回数と任意の講座費を分ける

PSM Iを試験のみで受ける場合、支払いは1回US$200です。受験パスワードに有効期限はないので、購入してから準備が整うまで学習を続けられます。ただし、1つのパスワードで受験できるのは1回だけです。

計算例として、試験を別途購入して2回受ける想定なら、US$200×2回=US$400に適用される税を加えた額が試験料予算です。 Scrum.orgの公式講座には、対応する試験の受験1回分が含まれます。講座を受けるなら、試験のみの料金を別に足す必要はありません。

取得後は生涯認定で年間更新料がないため、資格維持のための定期的な支払いを抑えたい人に適しています。

講師との学習を取得経路に組み込みたいならCSM

認定講師から学び、疑問を解きほぐしながら理解を深めたい人にはCSMが候補になります。研修に参加でき、候補講座の受講料と、取得後の通常更新の負担を受け入れられることが選択条件です。

条件が合うなら、CSMの認定講座を選ぶところへ進みましょう。講座案内では、日程と料金に加え、自分が学びたい場面をどのような演習で扱うかを比較すると、支出の目的が明確になります。

研修を必須にせず、維持負担を抑えたいならPSM I

学習方法を自分で選びたい人や、資格の定期更新を避けたい人にはPSM Iが候補になります。講師の説明が必要なら講座を選べるため、独学への自信だけで候補から外す必要はありません。

役割の責任と自己管理の関係を説明できるよう準備したら、PSM Iの受験申込みへ進むことを検討してください。試験のみで受けるか、講座を利用するかを決めてから購入すれば、学習支援と受験への支出を整理できます。

まとめ

スクラムマスターを担ううえでは、支援する責任と、相手が持つ判断の責任を分けることが出発点です。今日扱っている障害について「対話が必要な相手」「開発者が調整する計画」「POが判断する優先順位」を書き分け、引き受けすぎている判断がないか確かめてください。

資格への支出は、その役割を学ぶ方法から決めましょう。講師との学習を取得経路に組み込むならCSM、研修を必須にせず学習経路を選び、更新負担を抑えるならPSM Iが候補です。受講できる日程と講座費、または試験への準備計画を書き出すと、自分に合う選択を具体化できます。

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